第3章 他地域等の災害時における情報通信の活用に関する考え方



1.国

(1)事業用電気通信設備規則及びネットワーク安全・信頼性基準の見直し

 郵政省では阪神・淡路大震災によって情報通信ネットワークが多大な被害を受けたことから、被害原因の詳細な分析と事業用電気通信設備規則(以下、「技術基準」)及び情報通信ネットワーク安全・信頼性基準(以下、「ガイドライン」)の見直しを進め、平成8年3月に事業用電気通信設備規則の改正が行われた。
 見直しにあたって検討された事項は以下のとおりである。

a)

停電対策

 阪神・淡路大震災においては地震発生直後からの長時間の停電によって、交換機が停止し、また、移動体通信基地局が停止するなど、停電に伴う障害の影響が大きかったことから、交換設備及び移動体通信基地局について、広域・長時間の停電対策として見直しが検討された。

b)

耐震対策

 これまでの「通常想定される規模の地震」への対応を基本とした耐震対策に対し、いったん被災した場合に、その影響の大きい設備について、直下型地震または海溝型巨大地震に起因する高レベルの地震動をも考慮した耐震対策として充実を図ることが検討された。

c)

防火対策

 阪神・淡路大震災では、大規模な火災や家屋の倒壊等によって加入者ケーブルが大きな影響を受けたことから、加入者ケーブルの被災を防ぐための対策を講ずることが検討された。

d)

バックアップ対策

 中継回線の障害に対しては、回線切り替えによるバックアップ措置が有効であった。また、加入者系回線や移動体無線基地局へのエントランス回線など2ルート化されていない部分に大規模な障害が発生した。このため、他ルート化や非常用無線設備の配備等によるバックアップ対策の充実を図ることが検討された。

e)

災害対策用機器の配備

 阪神・淡路大震災では、加入者ケーブルの被災によって約19万3千の加入電話等が途絶した。通信設備が被災した場合には速やかな復旧を図ることが重要であるから、復旧に必要な機器(可搬型無線基地局、可搬型無線装置、衛星地球局設備等)の配備等の見直しが検討された。

f)

その他

 阪神・淡路大震災では、通信設備の被災以外に、地震発生直後から通常の50倍を超える電話の輻輳や、交通手段が途絶している中での災害復旧体制のあり方などの問題点が指摘された。
 そこで、災害時において、大規模な輻輳が発生した場合には、緊急通話等重要通信の確保など情報通信ネットワークの有効活用を図るため、相互接続する事業者間で互いに協調して、接続規制等の輻輳対策を実施することが求められている。

図表3-1-1 技術基準及びガイドラインの見直し事項の概要

検討項目 見直し事項 技術基準 ガイドライン
停電対策 ・交換設備に対する蓄電池と自家用発電機の併置等
・移動体通信基地局に対する移動電源設備による給電等
・自家用発電機及び移動電源設備の燃料供給体制の確保 -
耐震対策 ・重要な設備について高レベルの地震動も考慮した耐震措置
防火対策等 ・通信ケーブルの地中化の促進 -
バックアップ対策 ・交換設備間を接続するような重要な伝送路の2ルート化の促進
・重要な光加入者伝送路のループ化の促進 -
・通信センターのバックアップ対策の促進 -
災害対策用機器の配備 ・応急復旧機材の配備
・無線・衛星を利用した臨時の電気通信回線の設定 -
その他 ・輻輳対策のための相互接続する事業者間の協調 -
・非常災害時における職員への連絡手段の確保等 -

(2)事業用電気通信設備規則の一部改正

 この検討をもとに、平成8年3月28日に事業用電気通信設備規則が一部改正された。改正の内容は次のとおりである。

a) 交換設備は、自家用発電機及び蓄電池の設置その他これに準ずる措置が講じられていなければならない。(第一種電気通信事業者)
b) 交換設備相互間を接続する伝送路設備は、なるべく複数の経路により設置されなければならない。(第一種電気通信事業者)
c) その故障等により電気通信役務の提供に直接係る機能に重大な支障を及ぼすおそれのある事業用電気通信回線設備に関する耐震措置は、大規模な地震を考慮したものでなければならない。(第一種及び特別第二種電気通信事業者)
d) 事業用電気通信回線設備の工事、維持又は運用を行う事業場には、当該事業用電気通信回線設備の故障等が発生した場合における応急復旧工事、臨時の電気通信回線の設置、電力の供給その他の応急復旧措置を行うために必要な機材の配備又はこれに準ずる措置がなされていなければならない。(第一種及び特別第二種電気通信事業者)





2.地方公共団体の取り組みの先進事例

(1)兵庫ニューメディア推進協議会

a)

阪神・淡路大震災の教訓

 兵庫ニューメディア推進協議会では被災者の立場から、震災直後から災害時における情報通信のあり方について研究を実施してきている。震災の教訓から今後の情報通信のあり方について、次のような教訓を見いだしている。

ア)

情報基盤の強化

 災害時には特に、どんな状況になっても何らかの情報伝達及び収集手段が確保できなければならない。今後は災害に強い情報通信基盤作りが急務となっている。具体的には
・耐震性の強化
・多重化・分散化の強化
を行うことが求められている。

イ) 情報伝達
A.

行政における情報収集

 阪神・淡路大震災発生直後は必要な情報が行政に十分集まらず、自衛隊等との連携が遅れ、初動時の救援活動に大きな支障が出た。原因としては、対応できる行政職員数の不足、通信システムのダウン、運用上の問題があげられている。
 今後は最悪の条件下でも情報収集が出来るようにしておくことが必要である。そのためには次のことが求められている。

a.

連絡網の整備

 行政間、行政・コミュニティー間、行政・ライフライン関連企業間、行政・マスコミ間に強固な連絡体制を確保しておくこと。

b.

全体的な被害状況の把握

 被害を視覚的に把握できるように、災害監視カメラ等の活用が必要。

c.

数的な被害状況の把握

 初動時に効果的な救援活動を実施するためには、負傷者数や倒壊家屋の数・場所等の定量的、具体的情報が不可欠である。コミュニティーとの連携による被害状況の把握や、シミュレーション等による情報収集が必要。

B.

行政からの情報提供

 阪神・淡路大震災でもっとも問題となったのは、震災直後に住民が安心できる情報が伝達されなかったことである。

a.

直接的情報提供手段の整備が必要

 広報車や街頭掲示板等による情報提供や、同報系無線、コミュニティ放送の活用などが必要。

b.

地域の防災拠点間との情報伝達手段の整備が必要

 行政とコミュニティー間の連絡体制等を再確認し、地域の防災拠点に電話・FAX、パソコン等の情報通信機器が必要。そして、行政と防災拠点間を結ぶネットワークが必要。

c.

伝達すべき情報内容

 被災者へ安心できる情報を伝えるべき。

C.

マスコミ

 マスコミから提供された情報は必ずしも被災者の情報ニーズにあっていたわけではなかった。被災地で実施された各種アンケートでも、「自分の身近な情報がわからない」「次の行動に結びつく情報がなかった」という意見があった。
 マスコミが災害時に果たす役割・使命は非常に重要である。

a.

マスコミ間の連携が必要

共同取材体制や、初動報道時における役割分担と報道する内容を決めておくこと等が必要。また、マスコミ間のネットワークを構築し、情報の共有も必要。

b.

コミュニティーとの連携

平常時から、コミュニティーと連携する体制が必要。災害時には、地域の状況や映像の提供をしてもらう。

D.

ケーブルテレビ

 ケーブルテレビはセンター設備には大きな被害がでなかったものの、ケーブルを中心に大きな被害が出た。電源が回復した後でも、放送再開できるまでは時間差があった。
 ケーブルテレビは公共性を再認識し、地域に密着したメディアとなる必要がある。

a. 耐震性の強化
b.

マスコミ・ケーブルテレビ局等との連携

 災害時にマスコミは全国向けに被害の全体像を伝え、ケーブルテレビは地域の生活情報をきめ細かに伝えるといった役割分担が必要。映像もそれぞれで取材したものを交換する等の連携が必要。
 また、ケーブルテレビ局間でネットワークを構築し、映像交換や将来的にはケーブルテレビ電話等で、地域の情報通信基盤として活用していくことが必要。

c.

行政・コミュニティーとの連携

 より地域に密着した映像を提供するために、行政との間で情報の交換が必要。また、地域のコミュニティーからの被害状況や復旧状況の情報提供が受けられるような連携が必要。

E.

コミュニティー

 被災者は、震災直後にどこに避難したらよいのか、とまどった人が多かったようである。また、コミュニティーに中心となってまとめる人材がいたかどうかによって、救援活動や行方不明者の把握などで差が出た。
 阪神・淡路大震災のような大規模かつ広域的な災害時には、行政からの救援活動が始まるまでは、コミュニティーでも必要な情報を集め、出来る限りの救援体制を整え、コミュニティーを守る必要がある。

a.

コミュニティーの組織化

 コミュニティーが再認識される必要がある。災害時にも機能するためには、防災体制の確立や連絡体制の再確認といったことから、地域の消防団のように、情報収集や情報ボランティアにあたる「情報団」が必要。

b.

コミュニティー間の連携

 コミュニティー間で連絡を取ったり、情報交換するためにも情報通信ネットワークが必要。

ウ)

防災教育の実施及び情報リテラシーの向上

 各企業・行政は、防災計画やマニュアルを整備していたが、十分に機能しなかった。これは予測を超える大規模災害であったことと、マニュアルが身についたものではなかったためと考えられる。
 平常時からの訓練と心構えが一番重要である。
・最悪の条件下を想定すること
・防災教育の実施が必要
 また、情報利活用の能力の向上が必要である。パソコン通信は阪神・淡路大震災で大きく取り上げられたが、避難所等における利用は担当者の能力に大きく依存していたため、必ずしも全ての避難所で有効に活用されたとはいえなかった。
 今後は下記の点に注力していく必要がある。
・パソコン等自治体における情報通信機器の整備
・パソコン通信・インターネットの平常時からの利用
・研修会等の実施

b)

兵庫ニューメディア推進協議会の提言

 兵庫ニューメディア推進協議会では、阪神・淡路大震災の教訓をもとに、5つの提言を行った。(兵庫県ニューメディア推進協議会「災害時における情報通信のあり方」報告書、平成8年6月)

ア)

「情報団」の創設

 地域において自主的に情報収集や伝達を行うボランティア組織として、また行政・メディア・ライフライン企業等防災関係機関と住民の橋渡し役として「情報団」(情報通信分野のいわば消防団的存在、情報を専門に扱う組織や人の総称)の創設を提言している。
 情報団のあり方としては3パターンを想定している。

A.

既存自治体型

自治会や消防団等、地域の既存組織を活用した情報団

B.

CATV型

映像を中心に扱い、主にCATVを活用した情報団

C.

ネットワーク型

インターネットやパソコン通信等、ネットワークを活用した情報団

 それぞれの組織のヒントとなる実例は次のとおりである。
A. 既存自治体型
a.

明石市のコミセン活動

 明石市では、震災以前からコミュニティー活動に力を入れている。
 また、自治会等自主防災組織が災害時に行政に対して行う情報連絡に関わる費用の一部を行政が負担する規定を定めている。

b.

兵庫県災害救援専門ボランティア制度

 兵庫県では、震災以降に各分野(救急・救助、医療、介護、建物判定、ボランティアコーディネーター、輸送)で登録ボランティア制度を創設しており、研修の実施や災害保険等による補償制度を定めている。

c.

尼崎市防災支援隊

 尼崎市では、消防団、消防署OBで、災害時に消防職員等の活動を支援する防災支援隊を組織している。

d.

西宮ミニFM局「ラ・ルース」

 西宮市でボランタリーベースで放送されているミニFM局。市民に携帯電話を配布し、連動した防災訓練等を実施している。

e.

静岡県警とアマチュア無線連盟との連携

 静岡県警では、災害情報の迅速な収集等のために、社団法人アマチュア無線連盟静岡県支部間と協定を締結している。

f.

東京での防災レポートタクシー

ニッポン放送と東京乗用旅客自動車協会間での「タクシー防災レポーター」制度。タクシーの運転手からリアルタイムで携帯電話を通じて、災害情報を得るもの。

B. CATV型
a.

パブリックアクセスチャンネル

 米国のCATV実施されている、市民に開放された専用チャンネルで、スタジオ・機材・撮影についてはCATVCATV局。

b.

関西学院大学の「ピープルズチャンネル」

西宮市の関西学院大学ヒューマンサービスセンターで、地元の復興状況やボランティアの活動等を映像で記録し、CATVで放送している。

C. ネットワーク型
a.

「電子ネットワークの利活用を中心とする防災情報通信システム構想」

 震災時に情報ボランティアとして活動した有志が、ネットワーク上の情報共有の仕組みや、情報ボランティアのあり方を提言している。

b.

パソコン通信ネット連絡会の「災害対応要項」

 パソコン通信7社が、インターVネットの仕組みを利用してネット間での情報共有を図っている。その際の要項。

c.

WIDEプロジェクトのインターネット防災訓練

 WIDEプロジェクトが、平成8年及び平成9年1月17日に実施した、インターネットを利用しての防災訓練。

イ)

コミュニティー情報拠点

 災害発生直後は、行政等防災関係機関は、災害発生直後から情報収集に努めるとともに、被災者に情報を的確に伝達することが必要である。しかし、テレビ・ラジオ等のマスメディアは、被害の大きい地域では停電等により、利用できないことが想定される。さらに、通信手段はもとより、鉄道・道路等もふさがれてしまったり、がれきで歩道も歩けないような状況になることから、遠距離への移動は困難である。
 そこで、小中学校区単位くらいの歩いて行ける範囲ごとに、行政等と被災者の間で情報をやりとりする拠点が必要である。その拠点は、どのような状況下でも通信網が途絶えることなく、行政等防災関係機関や被災地外との間で情報をやりとりできる強固な通信網と、行政等防災関係機関と被災地域住民との間の、情報受発信機能を備えることが必要である。そのような拠点を兵庫ニューメディア推進協議会は「コミュニティー情報拠点」と定義している。

ウ)

共同デスク---行政・メディア・ライフライン企業間の連携---

 阪神・淡路大震災では、防災関係機関である行政・メディア・ライフライン企業は初動時に被災者に安心できる情報を提供できなかった。これは各機関も被災し、対応が遅れたこともあるが、もっとも根本的な問題として、各々の組織内で収集した情報の共有が十分でなかったことがあげられる。どの組織においても、災害の全体像が把握できず、被災者に必要な情報を提供できなかった。
 このことから、今後は防災関係機関(行政・メディア・ライフライン企業等)間の情報共有や提供等の連携は不可欠である。
 「共同デスク」は災害時には、行政・メディア・ライフライン企業の各担当が集まり、情報の共有を図る場として創設が必要なものである。平常時には定期的に時事のトピック情報を交換する場であることが想定されている。
 このような「場」をインターネットやパソコン通信等のネットワーク上に設ける「サイバー共同デスク」も構想されている。

エ)

安否情報システム

 防災担当機関においては早急な救急・救命活動を遂行するにあたっては安否確認が重要である。一方、住民の立場からも、災害発生直後に欲する情報は家族・親戚・知人・社員等関係者の安否である。安否確認のための電話が殺到することによって輻輳が生じ、結果として地域の情報機能を大きく低下させる。連絡が取れなくなることから、地域が孤立化し、不安も生まれ、被災地内での情報空白が生じてしまう。そのため、やむを得ず被災地に向かって車で確認に行く人もでてくる。これが交通渋滞を引き起こし、復旧活動に支障をきたすことになる。
 行政として早急な救急・救命活動のために必要とされていることは、人的・物的な被害状況を正確かつ迅速に把握する必要がある。まず、全体像を把握するために、ヘリコプターからの映像や、さらには地震計と連動した被害予測のシミュレーション等が必要である。それらからの情報をもとに、初動時には災害対応を判断し、対策を実施しなければならない。非常時にはその作業は人海戦術とならざるをえない。そのためにも初動時の職員確保は重要である。救急・救命活動に従事する職員とは別に、情報の収集を専門に行う職員も必要である。その職員には、現場からリアルタイムに情報を発信できる機器が必要である。(もっとも、災害時には機器類は全て使えなくなる可能性も高いことから、足でまわることが基本であろう。)
 また、迅速な安否確認のためには平常時から機能する地域コミュニティーの再構築が必要であり、安否を情報団が中心になって確認していくことが必要であるとしている。
 行政、企業、住民、情報団・ボランティアの役割は次のように想定される。

A.

行政(県庁・市役所・警察・消防)

  • 専用線により独自の防災通信網の整備
  • 被害の全体像を把握するシステム構築
  • 救命・救援のための地域単位の安否確認
  • そのための人員、機器の確保
  • 平素からの活用と研修・訓練の実施
  • 地域コミュニティー育成・支援
  • 情報団の育成等
B.

企業

  • 企業内で時間帯別の安否確認が出来る仕組みづくり
  • 公衆回線に負荷をかけないような仕組み、ルールづくり
C.

住民

  • 地域コミュニティーへの日頃からの参加
  • 地域の住民やコミュニティーの様子の把握
  • 身近なコミュニティー情報拠点や公衆電話等の場所の把握
D.

情報団・ボランティア

  • 情報団は安否の確認の重要性を認識
  • 情報をどこに持っていけばいいかを理解
  • 行政職員との緊密な連携と安否確認作業の多重化
 安否確認方法を多重化する方法としては、NTTのボイスメールシステムやテレビ・ラジオ等の安否確認方法、コミュニティー情報拠点での情報集約、避難所における被災者リスト、企業における安否確認があげられる。
オ)

震災映像のデジタル・アーカイブ

 阪神・淡路大震災の記録を後世に残し、他の地域に震災の実情や教訓をつたえていくために、震災映像のデジタル・アーカイブを公的機関が保存していくことが検討されている。映像はデジタル化され、データベース化されることが必要である。テーマ内容としては以下のものが想定されている。

A.

被害状況

地区ごとの被害状況、避難所の状況

B.

行政

県庁、市役所、警察、消防、自衛隊の対応ならびに活動

C.

ライフライン

・電話・水道・ガス・電気などライフラインの被害状況ならびに復旧状況
・企業の対応

D.

交通

鉄道・道路・港湾等の被害状況と復旧状況

E.

支援

ボランティアの活動状況、救援物資の状況

F.

生活

避難所での生活、避難所運営、仮設住宅の状況

G.

教育

教師、子供の状況、学校再開やその後の状況

H.

医療・福祉

医療機関の被害状況、緊急医療機関の状況、社会的弱者の状況、外国人・高齢者対策等

I.

産業

震災での産業面での被害及び復興状況

J.

提言

震災の教訓、今後への提言、復興計画、各機関での取り組みや課題、復興に対する人々の意気込み等

 これらアーカイブはコミュニティー情報拠点等公共施設における活用、防災研修・教育での活用が想定される。さらにはネットワークを通じて全世界での利用も想定されている。

(2)三浦半島地域災害情報通信ネットワーク協議会

 三浦半島地域災害通信ネットワーク協議会では、三浦半島地域の4市1町(横須賀市、鎌倉市、逗子市、三浦市、葉山町)、神奈川県及びNTTが中心となり、自衛隊、海上保安庁、警察、医療機関等の災害対応活動実施機関の参加を得て「災害に強い総合的なマルチメディアの情報通信ネットワーク」を整備を推進している。

a)

「三浦半島地域災害情報通信ネットワーク」の位置づけ

 「三浦半島地域災害情報通信ネットワーク」(災害ネット)は「三浦半島地域の特性」及び「大災害時における情報通信サービスの現状」の二つの観点から見た「現状」より導き出される「対応の方向性」に基づいて、災害に関わる様々な活動の迅速かつ的確な実施を支援するために、3つの「基本要件」を実現する総合的な災害情報通信ネットワークとして位置づけられている。

ア) 三浦半島地域の特性(現状)
A.

谷戸・高台・海岸が多い

 谷戸や高台といった比較的被害の危険性が高い地域に住む住民が多く、その地域の高齢化率が高い。また津波被害の危険性が高い地域が多い。夏期には海水浴客が殺到する。

B.

半島固有の道路事情

 地形・地勢の制約から、道路網は関東平野部に向かう縦方向だけが発達。またトンネル、崖沿い、海岸沿いの道路が多い。

C.

地域外との激しい人・モノの流れ

 地域外、特に横浜地域との間において、人の流動及びモノの流通の量が多い。東京区部をはじめとする県外との流れも多く、特にモノについてその傾向が顕著である。また、夏期には、観光客が集中するため、人口が70%増加する。

イ) 大災害時における情報通信サービスの現状
A.

防災システムの現状

  • 共通
    ・平常時利用されていない
    ・操作性が悪い
    ・端末台数の制約がある
  • 防災行政無線
    ・電波法をはじめとする法的制約が多い
    ・通信速度が遅い
    ・周波数帯域・チャンネル数が少ない
  • (神奈川県)防災情報ネットワークシステム
    ・コミュニケーション機能がない
    ・優先で県庁ホストと市町村端末が接続、回線切断で機能停止
    ・運用が原則日中のみ
B.

公衆通信網(電話、FAX)の現状

  • 有線系の一般的な加入者電話等は、電柱からの引き込み線の切断等により、不通となる危険性がある。
  • 公衆網の通信網は輻輳する危険性がある
C.

マスメディアの現状

  • 一方向の大量情報伝達の手段であるため、個々人レベルからの情報発信やコミュニケーションの機能は少ない。
  • ニュースとしての価値の高い情報に集中し、必ずしも被災地の住民等との個々人が必要とする詳細かつ具体的な情報が提供されない傾向があったが、是正する方向で現在検討が行われている。
ウ)

対応の方向性

  • 「住民との情報受発信」の手段確保
  • 「地域外との情報の流れ」の確保
  • 「情報通信による地域連携の強化」
  • 既存の情報通信サービスの不足を補完し、相互連携を促す「災害に強い総合的な情報通信ネットワーク」の新規整備
  • 相互連携の相乗効果による大災害時における情報通信サービスの総合的なレベルアップ
エ) 災害ネットの基本要件
A.

市町を中心とする多様な主体間のコミュニケーションの実現

 市町内外の複数箇所(マルチポイント)間で双方向の情報伝達手段(情報のフロー)を実現する。

B.

災害情報の統合的な管理による情報共有化の実現

 一般住民や地域外等の不特定多数の個人を含む広域において災害情報を共有するために、情報を蓄積し、統合的に管理する手段(情報のストック)を実現する。

C.

マルチメディア対応

 動画像、静止画像、絵・図、音声・音、文字等の様々な情報媒体を状況に応じて適当に組み合わせて、一元的に扱うことによって、迅速・的確・簡易に情報を処理する。

b)

災害ネットの整備実現方針の考え方

 「災害ネット」によって実現しようとしている情報支援の内容は、図表3-2-1のとおりである。

図表3-2-1 「災害ネット」による情報支援

「災害ネット」については、整備作業を短期、中期、長期の三つのフェーズに分けている。整備作業はトータルで12年間を目途としている。また、各フェーズは3〜5年間での実施を目途としている。

ア) フェーズ1 ……

三浦半島地域における地域連携の基本機能を中心に整備する

  • 住民に対する情報受発信拠点を避難所を中心に整備する。
  • 自治体を中心に公的機関の拠点相互を結ぶ通信ネットワークを整備する。(地域外も一部含む)
  • 交通のキーポイント(陸・海・空)の情報共有化に着手する。
イ) フェーズ2 ……

三浦半島地域外との広域連携の基本機能を中心に整備する。

  • 地域外との情報共有手段を整備する。
  • 通信ネットワークで結ばれる拠点数を増やす。
ウ) フェーズ3 ……

三浦半島地域を中心とする災害ネットの理想像を完成させる。

  • マルチメディアを中心とする今後実用化が期待される最新の情報通信技術の活用を前提として、総合的な情報共有システムを整備する。
c)

「災害ネット」の全体図及び今後のスケジュール予定

 「災害ネット」の全体図は図表3-2-2のとおりである。
 今後のスケジュールとしては、平成8年11月現在で次のとおり想定されている。(図表3-2-3参照)

平成8年度 横須賀市役所本庁舎内にLAN及びコンピュータ(ハード)整備
平成9〜10年度 ソフト開発
運用協定、運用マニュアル等の整備
平成9年度〜 端末(常設型端末)等の整備
一部稼働
平成10年度〜 端末(携帯型端末)等の整備
平成11年度〜 本格稼働

図表3-2-2 三浦半島地域災害情報通信ネットワークの全体図

図表3-2-3 災害ネット整備にあたっての三段階と情報支援の相関

フェーズ

(段階)

初動 救命・救助 復旧 避難 生活復旧   整備実現の主要課題












































































フェーズ1
(短期的対応)
                  1.交通のキーポイント(陸・海・空)の情報共有化に着手する。
              2.住民に対する情報受発信拠点を、避難所を中心に整備する。
フェーズ 2
(中期的対応)
              3.地域外との情報共有手段を整備する。
フェーズ3
(長期的対応)
      4.マルチメディアを中心とする今後の実用化が期待される情報通信技術の活用を前提として、総合的な情報共有システムを整備する。

△:着手、部分的実現  ○:完成

図表3-2-3 災害ネット整備にあたっての三段階と情報支援の相関(続)

フェーズ
(段階)
救命・救助 復旧 整備実現の主要課題


調




調



調


調


調
フェーズ1
(短期的対応)
1.自治体を中心に公的機関の拠点相互を結ぶ通信ネットワークを整備する。
フェーズ 2
(中期的対応)
2.通信ネットワークで結ばれる拠点数をふやす。
(コミュニケーション手段としての基本機能は、フェーズ2で完成。)
フェーズ3
(長期的対応)
          ※コミュニケーションの手段は、フェーズ2までに整備されるが、フェーズ3で完成する情報共有の機能と連携して活用することによって、最大限の効果を発揮する。

△:着手、部分的実現  ○:完成





2.民間等

(1)NTT

 NTTでは「大都市激甚災害対策委員会」を発足させ、阪神・淡路大震災の教訓をふまえ、77項目からなる大都市激甚災害対策を策定した。その主なものは次のとおりである。


a)

施策の進捗状況

 現在、停電時公衆電話の無料化、災害時優先電話の見直し、新しい機器管理/復旧体制の整備等10施策が完了している(図表3-3-1参照)。

b)

被災地情報ネットワーク

 被災地情報ネットワークは、災害時の被災地において自治体が中心となった情報流通、避難住民への的確な情報提供を可能とするため、パソコン通信ネットワークを利用した情報プラットフォームを作り、救援活動や復旧活動、さらには被災者の生活を支援するための情報流通を行う。アプリケーション開発にあたっては横浜市災害対策室が協力している。
 システム構成としては、自治体等にネットワークの核となるサーバーを設置し、避難所と想定される小中学校等に端末を設置し、その間を専用線やISDN回線によって接続する。このネットワークで使用するサーバー・端末等は市販のパソコンである。平常時には学校間や行政の拠点間の情報連絡、住民サービス等の利用が可能である。アプリケーションは無料で提供される。
 アプリケーションの概要は次のとおりである。

ア)

行政職員情報

 避難所に駆けつけた職員・ボランティアに関するデータベース

イ)

避難所情報

 避難所の概略、避難者数管理

ウ)

被災地画像情報

 デジタルカメラ等により撮影した被災地の画像情報

エ)

避難者安否情報

 住民の安否、居場所等のデータベースで、50音や電話番号での検索が可能

オ)

物資要求配送情報

 避難所で必要な物資の要求や配送センタ等における物資の在庫状況等のデータベース

カ)

生活関連情報

 パソコン通信と連携した被災後の生活情報や行政からの情報の収集・発信

c)

首都圏における被災シミュレーション

 NTTでは南関東地震によって首都圏が被災したと仮定した場合の被災シミュレーションを行っている。(南関東地震は横浜市直下20kmを震源とするM7.9で半径60kmが震度6、被災加入者が112万人であったと仮定した。図表3-3-2 参照)
 また、首都圏では、NTTを含むライフライン各社が災害情報をラジオ6局を通して直接リスナーに提供する仕組みとして「ラジオ・ライフラインネットワーク」が1996年7月に発足している。(図表3-3-3参照)

d)

緊急衛星通信システム

 孤立防止の対策がとられていない地域に適用する、新たな超小型衛星通信端末を用いたKu帯超小型通信衛星システム(Ku-1ch)も開発が進められており、1997年2月より運用を開始する予定である。
 このシステムでは、孤立の恐れのあるエリアに端末を設置し、N-STAR衛星を介して端末を基地局と接続することにより、被災時における通信を提供しようというものである。端末には固定型と可搬型の2種類がある。固定型端末は孤立に備え、役場等にあらかじめ設置しておく。可搬型端末は被災地が孤立した場合に、通常NTTのビルに保管している端末を孤立エリアの避難所等に、NTTが運搬・設置することにより通信を提供しようというものである。
 このシステムは、端末のほかに、公衆網につながる基地局、基地局と端末局の監視制御を行う統制局、N-STAR衛星、基地局及び統制局をつなぐ局間専用回線、及び公衆網から構成される。使用周波数帯はKu帯(14/12GHz)で、1回線あたり音声1回線(双方向通話)の伝送が可能である。衛星回線数は基地局装置を増設することにより、最大双方向500回線まで対応可能である。収容可能端末局数は最大で3000端末である。

図表 3-3-1 NTTの大都市激甚災害対策(主要項目)進捗状況

施策項目 進捗状況
輻輳緩和のための対策(全国利用型伝言ダイヤル) 平成9年末導入予定
通信衛星の活用
N-STAR利用のサテライト・ポータブルホン(Sバンド)の導入
衛星地球局の主要有人ビル設置
 
導入開始
検討中
公衆電話の無料化 導入済
被災地情報ネットワーク支援 導入開始
通信ケーブルの地中化の推進 実施中
予備電源設備の耐災化 導入中
ネットワークの信頼性と柔軟性の確保(EOS代替) 平成8年下期導入予定
建物、鉄塔等の耐震診断の徹底と対策実施 実施中
通信設備の遠隔監視制御機能の強化(電源制御) 導入中
運用監視センタや各種データベースの分散による信頼性向上 導入済
災害時優先電話の見直し(対象機関の明確化・範囲拡大) 実施済
他事業者網との相互接続における災害時優先電話の実現 導入中
110/119番無効発呼対策および機能の高度化 導入済
お客様サービスセンタの確保(スーパーACD導入) 導入中
法人ユーザに対するコンサルティング等 実施中
災害時における行動マニュアルの制定 実施済
災害復旧体制の整備 実施済
アクセス系被災状況の早期把握ツールの開発 導入中

図表 3-3-2 首都圏被災シミュレーション結果(総括表)

対象ユーザ サービス
回復目標
シミュレーション
結果
今後の課題
災害救助機関 24時間 24時間 発災が勤務時間帯で、社員稼働率80%。勤務時間外では、社員稼働率20%となり対策が必要
重要加入者 3日 3日 倒壊電柱の排除作業、火災発生等で1日目の復旧作業は困難。復旧の優先順位付けが必要
重要な法人ユーザ 3日 3日
一般加入者 14日 10日 3日目から全国6,000人応援必要(所外)

図表 3-3-3 ラジオ・ライフラインネットワーク

(2)NHK

a)

非常災害と緊急警報放送

 緊急警報放送は、大災害の恐れがある場合、放送局から「ピロピロピロ」という警報音を兼ねた信号(緊急警報信号)を送ることによって、特定の機能を持つ受信機(緊急警報受信機)を自動的に作動させ、深夜等でも災害情報を受信者に伝えようというもの。緊急警報放送を実施するのは当面

ア) 大規模地震の警戒宣言が発せられたことを放送する場合
イ) 津波警報が発せられたことを放送する場合
ウ) 災害対策基本法第57条の規定により、都道府県知事等から要請された放送をする場合
に限ることになっている。
 緊急警報信号にはすべての受信機を作動させる第1種信号と受信側で選択受信できる第2種信号がある。また、信号の適用範囲を限定させるために地域符号(地域共通、広域、県域)をつけて送信することになっている。
 宮城県沖地震(昭和62年3月18日午後)、三陸沖地震(平成元年11月2日午前)、北海道南西沖地震(平成6年10月4日)、三陸はるか沖地震(平成6年12月28日)、奄美大島近海地震(平成7年10月19日)、ニューギニア地震(平成8年2月17日)の発生にともない津波警報が発令されたため、全7波、全国及び県域による緊急警報放送が実施された。
 また、外国人向け緊急英語放送も実施されている。放送内容は大規模地震の警戒宣言の発表内容と津波警報の内容である。阪神・淡路大震災では英語による安否情報や生活情報の放送も試行的に実施された。
b)

非常災害と衛星利用

 平成4年度から通信衛星(CS)を利用した映像伝送システムが導入されている。特に、平成7年の阪神・淡路大震災やオウム報道、平成8年2月の北海道古平町トンネル落盤事故等で利用された。
 今後は毎年各局へのCS設備の整備を図り、平成8年度には持ち運び可能なデジタル式設備を含めて、全国に35機のCS中継設備の配備が計画されている。

(3)社団法人日本アマチュア無線連盟

 アマチュア無線の地域社会との連携の中で「非常時」の対応についての体制が今後順次整備される予定である。
 平成7年(1995年)4月には「非常通信体制整備の基本要綱」がまとめられ、各支部に通達された。
 平成8年(1996年)8月には「非常通信に関する基本方針ならびに非常通信実施要領」が作成され、非常通信への対応が強化された。この中で規定されている基本原則は次のとおりである。

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